う飄々(仮)

いうてまじめやで。

チェブラーシカの「これは」と思うところ

 

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チェブラーシカは世界中で人気のキャラクターである。外見のかわいさが受けて日本でもムーブメントが起こった。「かわいい文化」先進国ともいえる日本でもグッズの売れ行きが目立ったことからもその大きなポテンシャルの一端は垣間見える。

チェブラーシカはロシアを代表するマスコットキャラクターで、ロシア国内では日本でいうドラえもんほどの認知度がある。チェブはロシアの国民的キャラクターなのである。ロシアといえば、トルストイドストエフスキーチェーホフだが、そこにもう一人食い込むとすればチェブラーシカだろうとも言われている。その上、チェブはかわいさにおいて他の三人を凌駕していることは言うまでもない。

ロシア随一の文化的資産、それがチェブラーシカなのである。

 

チェブラーシカはかわいい。それが人気の核になっていることは疑いない。だが、かわいいだけではここまでの人気は出ない。チェブラーシカはかわいいだけじゃない。チェブにはかわいさの他に魅力があるのだ。人気のあるものには人気の理由がひとつだけじゃなくいくつもある。チェブもそうだ。

しかし、チェブはかわいい。何をおいてもまずかわいい。ほかの何を外してもこれを外すわけにはいかない。

ただし、チェブのかわいさを言うとき、それは外見上のかわいさに限定されない。キーホルダーやストラップになったチェブも十分かわいいが、そのかわいさが頂点に達するのはチェブが動いたり話したりするときである。つまり映画「チェブラーシカ」のチェブがチェブの完全体だということで、それを見ないでチェブのかわいさを云々することはできない。人は、コマ撮りの映像で動いたり話したりするチェブを見て、そのあまりのかわいさに圧倒される体験を経て、初めてチェブの虜になれるのだ。

動いたり話したりするチェブは、当たり前だが何にもないところで動いたり話したりするわけではない。とくに一緒にいることが多い友達のゲーナと話すときにそのかわいさが発揮される。ゲーナは動物園で働くワニで、歌とアコーディオンの演奏が得意な紳士でもある。ある日、ゲーナが友達を募集するチラシを街中に貼り、それを見たチェブがゲーナと友達になりにやってくるところから、二人は友達同士になる。自分の正体さえ知らないチェブに、年上のゲーナはいろんなことを教える。チェブは、いつも素直で健気で間が抜けていて、かわいさの観点から見て模範的な存在である。ゲーナに感情移入して「チェブラーシカ」を見ると、チェブのかわいさはまさに天井知らずで、二人で線路を歩くシーンのやり取りなどはかわいすぎて感動的なほどである。チェブがゲーナの役に立とうと「荷物を持つよ」と言うのだが、それに応えるゲーナもまた素敵で、このシーンは映画のハイライトのひとつである。

 

どのシーンを見ても、チェブはかわいいしゲーナは親切で心動かされる。なかでもこれはと思うのが、「水色の汽車」を歌うゲーナとそれを聴くチェブのシーンである。ステージは水色の列車の屋根の上で、列車の先頭に座るのではなく、最後尾の車両に後ろ向きに並んで座る。過ぎていく景色を惜しみながら未来へ進んでいく様子が切なくてなんとも言えない。だが、チェブには歌ってくれるゲーナがいるし、ゲーナには聴いてくれるチェブがいる。意地悪ばあさんのシャパクリャクもいる。三人並んで、新しく現れては遠ざかっていく景色を見ながら、歌をうたって前に進んでいくのである。これ以上すばらしい時間の送り方はないように思える。

 

 

ゆっくり時が ただよっていく

過ぎたことは 取り戻せない

過去はちょっと 惜しいけれど

未来はもっとすてきだよ

 

道は はるか彼方に まっすぐと

地平線へと向かう

だれだっていいこと あると信じてる

走るよ 走る 水色の汽車

 

だれかを 悲しませたかな

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友よ 急げ 新しい冒険に

スピード上げて 機関士さん

 

道は はるか彼方に まっすぐと

地平線へと向かう

だれだっていいこと あると信じてる

走るよ 走る 水色の汽車

 

水色の汽車が 走って ゆれる

スピード上げて 機関士さん

今日という日は なぜ終わるのか

一年中 続けばいいのに

 

道は はるか彼方に まっすぐと

地平線へと向かう

だれだっていいこと あると信じてる

走るよ 走る 水色の汽車

 

 

 

「スパシーバ!」と言うチェブはかわいい。それが聞きたさに親切にすることはおそらく避けられないはずだ。だからゲーナのチェブへの親切は当然だともいえる。ゲーナの場合も、その親切がチェブ以外(たとえば意地悪ばあさんのシャパクリャク)に及んで初めて価値が出るのではないだろうか。

チェブラーシカはかわいい。そのかわいさは見るものに、人に親切にすることを教えてくれる。

 


Cheburashka - Goluboy vagon(Japanese Subtitle ...